実践編 第1回|腰痛 ― 「同じ腰痛」を証で解く
尺:約5分
コールドオープン
【ビジュアル指示】 外来診察室のドア表示「整形外科」。カウンターに座るDr.K。次々とカルテをめくる。4枚のカルテに同じスタンプ「腰痛症」。
Dr.K:「腰痛症、腰痛症、腰痛症、腰痛症……。同じ日の外来に4人、全員腰痛。」
(カルテを重ねて置く。ため息)
Dr.K:「これ、全部同じ対応でいいのか?」
テロップ:「同じ腰痛 — でも、証が違えば方剤が変わる」
対話(証で振り分け)
【ビジュアル指示】 達人が椅子を引いて座る。ホワイトボードに「腰痛」と書かれた付箋が1枚。達人が付箋を4枚に引き裂くイメージで、4つのルートを書き足していく。
達人:「Dr.K、原理編でやった通りだ。主訴は入口。その先の”証”で分岐する。4人、それぞれ見ていこう。」
① 牛車腎気丸
【ビジュアル指示】 画面左に患者プロファイル表示:「78歳・腰痛+下肢しびれ・冷え・夜間頻尿」
Dr.K:「1人目。78歳、腰痛と下肢のしびれ。冷えがあって、夜間頻尿も。」
達人:「高齢、下肢しびれ、冷え、夜間頻尿。これらが揃うと?」
Dr.K:「腎虚に水滞、それに寒。……牛車腎気丸ですか。」
達人:「そう。腎虚+水滞+寒 → 牛車腎気丸。」
テロップ:「高齢・下肢しびれ・冷え・夜間頻尿 → 腎虚+水滞+寒 → 牛車腎気丸」
② 疎経活血湯
【ビジュアル指示】 患者プロフィル切り替え:「55歳・慢性腰痛・夜間・天候で悪化・飲酒・固定痛」
Dr.K:「2人目。55歳、腰をこじらせてから痛い。夜と天候の悪い時に悪化。お酒を飲む。痛みの場所は固定。」
達人:「こじれた、夜間・天候で悪化、飲酒、固定痛。何を見る?」
Dr.K:「瘀血……ですよね。それに水滞も。」
達人:「その通り。瘀血+水滞 → 疎経活血湯。」
テロップ:「こじれた・夜間/天候悪化・飲酒・固定痛 → 瘀血+水滞 → 疎経活血湯」
③ 八味地黄丸
【ビジュアル指示】 患者プロフィル切り替え:「72歳・腰下肢のだるさ・冷え・しびれ/浮腫は目立たない」
Dr.K:「3人目。72歳、腰から下肢のだるさと冷え。でも、しびれも浮腫も目立たない。」
達人:「①と比べてみな。」
Dr.K:「あ、①の患者はしびれと浮腫がはっきりあった。この人はそれがない。同じ腎虚だけど……。」
達人:「違いはそこだ。しびれ・浮腫が目立たなければ、腎虚 → 八味地黄丸。しびれ・浮腫が明らかな例には牛車腎気丸。牛車腎気丸は八味地黄丸に牛膝と車前子が加わったもの、下肢のしびれと浮腫を狙う。」
テロップ:「高齢・腰下肢のだるさ・冷え(しびれ/浮腫なし)→ 腎虚 → 八味地黄丸」 テロップ(補足):「牛車腎気丸=八味地黄丸+牛膝・車前子(下肢しびれ/浮腫が明らかな例)」
Dr.K:「なるほど。同じ腎虚でも、しびれ・浮腫の有無で方剤が変わる。」
④ 桂枝加朮附湯
【ビジュアル指示】 患者プロフィル切り替え:「45歳・腰痛・冷えで悪化・温めて軽快」
Dr.K:「最後、4人目。45歳、腰痛。寒いと悪化して、温めると楽になる。」
達人:「冷えで悪化、温めて軽快。熱感はない?」
Dr.K:「ないです。」
達人:「なら寒湿だ。寒湿 → 桂枝加朮附湯。温める方向だ。」
テロップ:「冷えで悪化・温めて軽快する腰/関節痛 → 寒湿 → 桂枝加朮附湯」
安全性
【ビジュアル指示】 ホワイトボードに4つの方剤名が並ぶ。達人が赤ペンで注意点を書き込む。
達人:「ここで必ず伝えることがある。」
達人:「まず、西洋医学的な除外が前提だ。腫瘍、感染、骨折、馬尾症候群——これらのred flagを必ず鑑別してから。漢方はその上で考える。」
テロップ:「西洋医学的red flag(腫瘍・感染・骨折・馬尾)の除外が前提」
達人:「それから方剤の注意。附子を含む方剤——桂枝加朮附湯——は、心臓疾患や過敏な人で要注意。地黄を含む牛車腎気丸・八味地黄丸は、胃腸が弱い人で食欲低下・下痢を起こすことがある。甘草を含む方は連用で浮腫や血圧上昇に注意。」
テロップ:「附子:心臓疾患・過敏に注意/地黄:胃腸虚弱で食欲低下・下痢/甘草:連用で浮腫・血圧上昇」
Dr.K:「漢方も薬ですからね。ちゃんと確認する。」
締め/CTA
【ビジュアル指示】 診察室。4枚のカルテが横に並ぶ。それぞれに証と方剤名が手書きで添えられる。
達人:「“腰痛”は入口。証で見れば、4人は4通り。」
Dr.K:「病名が同じでも、証が違えば方剤が変わる。……これが実感か。」
達人:「次回はしびれだ。」
テロップ(締め):「“腰痛”は入口。証で見れば、4人は4通り。次回、しびれ。」
テロップ(CTA):「運動器漢方 導入動画シリーズ(実践編)第1回 — 次回:下肢しびれ・坐骨神経痛」
END