整形外科医は、毎日「水」を診ている
「膝に水がたまっていますね。抜きましょう」――外来で毎日のように口にする言葉です。私たちは日々、関節液という「水」と付き合っています。
漢方は、この「水」をもっと広くとらえます。膝にたまった関節液も、夕方に足がむくむのも、めまいも、尿量が異常に多い・少ないのも――出どころは違っても、「水が偏って滞っている状態」=水滞として一つの枠で見るのです。
耳鼻科の先生がめまいに五苓散を使う。整形外科医が関節の水を診る。一見バラバラのこれらが、「水の巡りの滞り」という共通の背景でつながっている――だから、水太りの人の浮腫に効く方剤が、関節の水にもめまいにも効くことがある。偶然ではなく、同じ背景を捉えているからです。
気・血・水 ― 3つの巡り
「水」は3要素のひとつにすぎません。漢方は体を、気・血・水という3つの巡りで見ます。
気は元気・活力、生命を動かすエネルギーと機能。血は血液と、それが運ぶ滋養。水は体液の巡り。この3つがうまく巡っていれば健康で、どこかで偏ったり滞ったりすると不調が出る――そういう見方です。運動器でいえば、だるさ・気力低下は気、しびれや固定痛は血、むくみや関節の水は水、という具合に翻訳していきます。
「血」の滞り ― 瘀血のサイン
「血の巡りが悪い」と聞くと血栓を思い浮かべますが、漢方の瘀血(おけつ)は西洋医学の血栓とは少し違います。瘀血には見分けやすいサインがあります。
- 痛みが固定して動かない
- 夜間に悪化する
- 色素沈着がある
「夜間に悪化する固定痛」――これは運動器外来で確かに見る所見です。つまり、私たちはすでに「血の滞り」も毎日診ているのです。
大前提 ― 器質的な原因があるなら、それを先に除外するのが前提です。器質的疾患を見逃して漢方でなんとかしよう、という話ではありません。その上で、説明のつきにくい不調を気血水の枠組みで読み直すと腑に落ちることがあります。
今日からの一歩
次に膝の水を抜くとき、夕方のむくみを聞いたとき、心の中で一度「これは水滞だな」と翻訳してみてください。その小さな読み替えが、証で診る第一歩になります。
口渇があるのに尿量が少ないタイプのむくみには 五苓散 が基本方剤です(→ 症例で確認)。レバーで水滞と方剤の関係を動かすなら 証エクスプローラ へ。