「効くから、ずっと出す」の落とし穴
こむら返りに芍薬甘草湯を出したら、よく効いた。だから次も同じものを――そうやって1年、毎日3回、続けていた。ところが、その患者の足のむくみが気になり、血圧も少し上がっていた。
「漢方は自然なものだから安全」ではありません。漢方薬も薬です。効くからと漫然と続ける西洋薬の感覚は、漢方にはそのまま当てはまりません。運動器で押さえておきたい生薬が4つあります。
甘草 ― 「総量」で効く
甘草(カンゾウ)は非常に多くの処方に含まれます。1処方あたりの量は少なくても、甘草を含む複数の処方を併用すれば総量が上がる。これが連用で偽アルドステロン症――低カリウム血症・浮腫・血圧上昇――を招きます。
だから 芍薬甘草湯は原則として頓用。こむら返りが出たときに飲むもので、毎日3回を何ヶ月も続ける薬ではありません。他に甘草を含む処方を使っているなら、その総量まで見る必要があります。
附子と麻黄 ― 力のある生薬ほど、証に合わせる
附子(ブシ)は体を温めて鎮痛する、力のある生薬です。冷えで悪化する関節痛・神経痛(寒証)に効きます。ただし過量でのぼせ・動悸・しびれ。しびれは患者が元々訴える症状と区別がつかなくなるので厄介です。温める力が要る寒証の人に使うから効く。熱証の人に使えば悪化させます。
麻黄(マオウ)はエフェドリン様作用があり、動悸・血圧上昇・排尿障害・不眠が出うる。前立腺肥大のある高齢男性や高血圧の患者には要注意です。
安全に使う、が正解
漢方は「安全じゃない」のではなく、安全に使えるが正解です。証で使い、用量を守り、総量を管理する。それができれば十分に安全です。処方の前に患者の状態をしっかり見る――先生がすでにやっているそれが、そのまま証なのです。