「しびれ」は一通りではない
牛車腎気丸は確かにしびれに使います。でも、しびれは一通りではありません。年齢・冷えの分布・何を合併しているかで、証が変わります。3人を見比べていきましょう。
① 76歳・LSS・下肢の冷え・夜間頻尿 → 牛車腎気丸
高齢、腰部脊柱管狭窄症、下肢の冷え、夜間頻尿。腎虚+水滞+寒で 牛車腎気丸。LSSの下肢症状に対してRCTで有効性が報告されています(Hamaguchi 2017)。ただし――証が合っていてこその話です。証が違えば、別の方剤になります。
② 52歳・こじれた坐骨神経痛・夜間/天候悪化・飲酒・固定痛 → 疎経活血湯
腰をこじらせてからの坐骨神経痛。夜と天候の悪いときに悪化、飲酒あり、痛みは固定。腰痛編と同じ瘀血のサインです。主訴が腰痛でも坐骨神経痛でも、証が瘀血なら疎経活血湯。証が方剤を決め、主訴が決めるのではありません。
③ 34歳・やせ型・手足末梢の冷えとしびれ・しもやけ → 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
ここが重要な分かれ目です。①の牛車腎気丸と比べます。①は高齢で夜間頻尿がありました。この患者は若く、頻尿はない。冷えは手足の末梢・先端だけが強く、しもやけができ、冬に悪化する。
これは腎虚ではありません。血虚に寒が重なった状態で、当帰四逆加呉茱萸生姜湯。血が足りないから末梢が温まらない、という像です。
鑑別の要点
取り違えないために ― 牛車腎気丸は「高齢の腎虚」(夜間頻尿を伴う)。当帰四逆加呉茱萸生姜湯は「末梢の血虚+寒」で、腎虚ではありません。年齢・冷えの分布・随伴症状で分けます。同じしびれでも、腎虚のしびれと血虚のしびれがあるのです。